【読書メモ】サイコパス 中野信子
- 他者に対する共感性や痛みを認識する部分の働きが、一般人とサイコパスでは違う。
- サイコパスは必ずしも冷酷で残虐な殺人者ばかりではなく、大企業のCEOや弁護士、外科医といった大胆な決断をしなければならない職種の人々にも多い。
- サイコパスはシロかクロではなく、グレーゾーンがあり、症状にも程度がある。
- 100人に1人くらいの割合でサイコパスはいるので、日本には約120万人のサイコパスがいる。
サイコパスの特徴を以下に書きます。
- ナルシスティック
- 恐怖や不安を感じにくく、大舞台でも堂々として見える
- 崇拝者のような取り巻きがいたりする
- 常習的に嘘をつき、話を盛る
- 物事を継続して最後までやりきるのが苦手
- 批判されても折れない、懲りない
- 付き合わなくなった人間のことを悪くいう
- 人当たりは良いが他者に対する共感性そのものが低い
なるほどー。こういう人いるなーと思いつつ、自分も少し当てはまるところはあるね。
- サイコパスでない人の全て善人ではないように、全てのサイコパスが悪人ではない。
- しかし、サイコパスの性質を知らないと、都合良く利用される可能性がある。
- サイコパスは口達者で、恐れを知らずに果敢に行動するため、魅力的に見え、ファンになってしまう人も多い。
- 普通の人なら倫理的にブレーキを踏んでしまうところでも、サイコパスは気にせずやってしまう。
- サイコパスは第一印象がとてもいい。簡単に相手の信頼を得ることができるのが、特徴。
- 顔が細長い人より、横幅が広い男性の方が、サイコパシー傾向や反社会的性向が高い。女性では相関関係があまりない。
- 心拍数がもともと低く、しかも上がりにくい人の方が反社会的行動を取りやすい。心拍数が上がりにくいと、一般人がドキドキする場面でも、ドキドキしないので、ブレーキがかからないという、仮説。もしくは、心拍数を最適なレベルまで上げようとして、強い刺激を求めるという仮説。
- 心拍数が低いということはメリットもある。例えば、爆弾処理班のベテランでは、危険な仕事に取り掛かると心拍数が減少した。
- サイコパスに対して飢餓に苦しむ人などの悲惨な画像を見せても、感情と関連する部分の脳は活性化しない。
- 共感性は低いが、相手の目つきから相手の心理状態を読み取るのは得意。
- サイコパスにとって相手の感情理解は、共感力でするものではなく、国語の試験で、文脈から該当各所を見つけ出し解くようなもの。
- サイコパスの一番の悩みは孤独感が強いこと。人が離れていく経験が強いので、他者に対して仲間意識ではなく、敵という意識がある。
- サイコパスは道徳によって判断することがなく、合理性に基づいて判断する。
- サイコパスは扁桃体の活動が低いので、動物が本来持っている恐怖などを感じづらい。
- 反省できない人、罰を恐れない人がいるということを人は認めることができませんが、そういう人がいます。そして罰を恐れない人からすれば反社会的行為を抑制するために作られた社会制度やルールは無意味。サイコパスの犯罪を抑制予防するためには、発想の転換が必要。
- 自分は普通の人と違うんだと、どこかの時点で気づき、それを隠そうとし、嘘が上手くなる。
- サイコパスには勝ち組サイコパスと負け組サイコパスがいる。勝ち組は捕まりにくいサイコパス。負け組は捕まりやすいサイコパス。捕まりにくいサイコパスは私たちの身近にいる。
- しかし勝ち組サイコパスの研究は難しいもの。何故かと言うとサイコパスの研究のほとんどは刑務所にいるサイコパスを対象としているから。
- アメリカとカナダの研究チームが約1,000人を対象とした実験調査から、お金持ちで高学歴そして社会的地位も高い人ほど、ルールを守らず半倫理的なふるまいをすることを発表した。社会的な階層が高い人ほど、自分に有利になるようにゲームを進行した。このことから社会的経済的地位が高い人にはサイコパスが多いだろうと推測されている。
- サイコパスは遺伝的影響と環境的な影響がある。遺伝的には全く問題がなくても、家庭環境により虐待、母性の剥奪等があればサイコパスになれる可能性は十分にある。
- サイコパスに関して言えば遺伝の影響は無視できないものがある。そしてこれからの時代は遺伝情報が当たり前のように取り扱われるようになる。そのために社会制度や法整備、遺伝に関するリテラシーを高めていくべき。
- サイコパスが存在する理由の1つに、時代を過去に遡れば遡るほど暴力的であり、人が死ぬこと・傷つく事が身近になったということがある。そんな環境の中、生き延びるためにはサイコパス的な感覚があったほうがよかったのかもしれない。
- サイコパスが生きやすい社会と言うものもある。例えばブラジルにとある先住民族。そこでは殺人をすることで集団内の地位は高まり、子孫を多く残す。日本人の価値観とは全く合わないだろうけど、僕たちの価値観が人類共通の普遍的な価値観ではない。
- サイコパスの多くは口ばかり甘くて地道な作業ができないことが多い。だけど口がうまいので出世しやすい。
- 起業家としてのセンスを持っている勝ち組サイコパスも存在しています。なぜならリスクはリスクと思わない力があるからで、世界で最も洗練された勝ち組サイコパスにアップル創業者のスティーブジョブスがいる。
- 自分で地道な作業するよりも、人を巧みに操り仕事をさせる能力が重視されるリーダー職において、サイコパスはもってこいの存在。
- サイコパスは特に看護や福祉、カウンセリングなどの人を助ける職業についている人を餌食にする。困っている人に手を差し伸べることを好む献身的な人間はサイコパスにとってつけこみやすく、利用しやすい。
- 人間の脳は自分で判断を行うことが負担になるので、話を信じる方が楽。それに加え、認知的不協和というものがあり、矛盾があった場合、その矛盾を解消するために都合の良い言い訳を作り出す。サイコパスはこれを巧みに利用する。
- 歳をとるとドーパミンの分泌量が減っていき落ち着きが出てくるけど、一方で意思決定力による喜びが減ってしまう。また、他人を疑うと言う行為は、脳にかかる負荷が高いため疲れてしまうので、歳をとるほど人を信じる。サイコパスの女性は、高齢者をターゲットにする。
- サイコパス向きの職業もある。一般人ではひるむような仕事や、長期な人間関係をしなくてよいような仕事。
- 100人に1人しかない資質は逆に言えば貴重なもの、他人に危害を加えずうまく生きられる方法、仕事があるはず。
ケヴィンダットンによるサイコパスの多い職業トップ10
- CEO
- 弁護士
- マスコミ
- セールス
- 外科医
- ジャーナリスト
- 警官
- 聖職者
- シェフ
- 公務員
サイコパスの少ない職業トップ10
- 介護士
- 看護師
- 療法士
- 職人
- 美容師
- 慈善活動家
- 教師
- アーティスト
- 内科医
- 会計士
☆☆☆
おもしろい本でした。サイコパスの人を拒絶する社会は、ただの優生学になってしまいます。だからサイコパスの特性を知って、罰を与えるといった犯罪予防システムがサイコパスの人にほとんど無意味であることを理解し、他の発想で対策を考え、共存していく道を模索していくしかないんだな。